メモ帳用ブログ

色々な雑記。

「和也とおれとどっちが好きだ?」(大丈夫、大丈夫の巻)と、タッチの最終盤で上杉達也は弟の未亡人である松平孝太郎に尋ねて傷つけてしまった。もし同じ質問を達也が南にしていれば、やはり同じように傷つけてしまうことになったんだろう。南が異性として意識していたのは達也だけ。それでも和也のことも、一緒に育ったきょうだい同然の相手として間違いなく好きだった。和也からすれば、どちらも南から好かれている双子なのに、兄は男として自分はあくまで身内として、というのはむしろ残酷だったろうけど。達也・和也・南の関係についてはクライマックス間際での南と父親の会話で上手く言い表されている。

父「南はタッちゃんが好きなのか?」
南「うん。」
父「ずっとまえから?」
南「うん。」
父「そうだな… 昔からタッちゃんの一番の理解者だったもんな。 南は──」
南「でも、 今のタッちゃんは南の予想以上よ。」
父「タッちゃんはカッちゃんの道を進むつもりなんだろか?」
南「きまってるじゃない。 カッちゃんの無念を晴らすために、厳しい練習に耐えて甲子園を目指しているのよ。」
父「そこまでならいいんだが… カッちゃんが生きていれば、最終的には問題はなかったと思うんだ。 三人とも相手の気持ちを大切にする、やさしい人間ばかりだもんな。 …だからこそ、 タッちゃんの気持ちはむずかしいんじゃないのかな。 考えすぎかもしれないけど…… もしかしたらタッちゃんは、カッちゃんがいずれ味わわなくてはならなかった、 南をあきらめるつらさまで…」

(ずっとまえからの巻)

タッチの浅倉南とH2の雨宮ひかりは同じようなポジション。この2人だと浅倉南のほうが好きかな。性格がどうというより、朝倉南のほうが好きな相手の誤解を招かないから。H2は「最後の最後まで比呂とひかりはどっちにいくかわからない展開になります」(あだち充本)なストーリーだから、主人公の比呂はさておき、ひかりも途中まで優柔不断に見えてヤキモキする部分があった。ひかりも片や男として片やきょうだい同然の相手としてという違いこそあれ、英雄と比呂の両方が同じくらい好きで悩んだんだろうし、男として意識している以外の相手にも優しいこと自体はむしろ自分も好きなところだけど。ただしきょうだい同然の相手と思われていたとはいえ、そうした甘えた親しさからの脱却はあだち漫画ではよく扱われるモチーフでもある。H2でも終盤の比呂とひかりは「姉弟」としての関係から卒業した。その上で比呂は男として選ばれることができなかった。あと朝倉南と雨宮ひかりから共通して受ける憧れのマドンナ的な印象というか、主人公の理想の女の子は八方美人と揶揄されるくらいみんなに優しい子、でもわかってても嫉妬してしまうことがある、みたいなモチーフもあだち漫画ではよく扱われる。

雨宮ひかりとラフの小柳かおりの行動も同じような部分が多い。ただし小柳かおりはサブヒロインだし、一時は明確に今の彼氏の芹沢と主人公の大和圭介の両方に気があったという違いがある。

ラフは水泳漫画。主人公の圭介とライバルたちは競泳選手、ヒロインとサブヒロインは飛びこみ選手。「芹沢くんを嫌いになったわけじゃないの。 大和くんのことを好きになったのよ。」(なにか用かいの巻)はサブヒロインの発言とはいえ少年漫画ではなかなか聞けないセリフだ。芹沢とかおりの関係の決着の仕方は英雄とひかりの決着の仕方を考える上で参考になる。

芹沢はかおりが圭介にも惹かれていることに気付き、喧嘩してしまう。そしてインターハイ中に「あいつに夢をみてもいい、 期待してもかまわん。 目をさましてやるよ、 かならず。 その時点で答えをきかせてくれ。」(もうかりまっかの巻)とかおりに告げる。 しかし競泳自由形100mの決勝で圭介に敗れてしまう。そのままひとり帰路に着いていたところでかおりと目が合い、呼び止められる。

か「返事をきかないうちに帰るの?」
芹「完敗だよ… いいわけの言葉も見つからない。」
か「自分の気持ちはともかく… 芹沢くんの勝利だけは一度だって疑ったことはなかったのよ。」
芹「──おれもだよ。」
か「50のターンでもしかしたらと思ったとき… 急に胸が苦しくなった。 心の底から負けてほしくないって──って、そのとき思ったの。 なぐさめてるとか憐れんでるとか思わないでね。 とにかく信じられなかったの。 ──でもそんな芹沢くんの姿をみて、 今まで一緒にいてもいつもどこか遠くに感じていた芹沢くんを、初めて身近に感じることができたの。 明日の高飛びこみのとき、そばにいてほしいの、 芹沢くんに。 返事になってるかしら?」

(気をつけてなの巻)