「できることなら… 甲子園だけは和也にいかせてやりたかったな…」
第254話(大丈夫、大丈夫の巻)
っていう上杉家の親父さんのセリフが、和也と南の関係の全てだったと思う。自分も南に思うところはある方だったけど、このセリフを読んで一気に氷解した。
「タッちゃんはカッちゃんの道を進むつもりなんだろか?(中略)もしかしたらタッちゃんは、カッちゃんがいずれ味わわなくてはならなかった、南を諦めるつらさまで…」
第199話(ずっとまえからの巻)
「あの日…決勝戦のマウンドにむかったままなんだよ―― 和也の魂は。甲子園ゆきの切符を手にいれるまでは動けないのさ。」
第208話(ここにはいないよの巻)
「明日の決勝戦、あいつは完全に上杉和也になりきってくるだろう。――そして、上杉和也としておれと戦い、上杉和也としてきみ甲子園を贈る。ちがうかな?」
第209話 (だれと戦えばの巻)
たぶん和也が生きていれば、和也が南を甲子園に連れて行って、それでも南は達也を選んだんだろう。和也はやりきったいい思い出とともに南を吹っ切り、先に進むことができたはずだった。でもそうはならなかった。だから達也は和也に甲子園ゆきの切符を渡したい自分のために野球を始める。そして達也が達也として頑張ったから、和也は他の誰でもない達也に力を貸すために、決勝戦のマウンドにたどり着くことができた。そう達也は信じている。目標を失って悩んでからも、本当のスタートを切り直して、達也は甲子園で優勝した。実際のところ、南を甲子園に連れていけたのは和也なのか、達也なのか。
どちらにせよ
「できることなら… 甲子園だけは和也にいかせてやりたかったな…」
「和也の本当にうれしそうな顔をみるのは、いつも一苦労だったわ。」
「え?」
「だって、それには達也をほめなくちゃならないんだもの。」
第254話(大丈夫、大丈夫の巻)
というあの場面で、和也が今どんな顔をしているかの答えは出ている。『タッチ』は微笑む和也の写真と、達也の成し遂げた明青の甲子園優勝記念皿とで、物語の幕を引く。