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破綻の美

淵の王 (新潮文庫)

淵の王 (新潮文庫)

 

ガンツに感動した、ガンツの構成はメチャクチャ、でもガンツは面白い、みたいなセリフが『淵の王』にあって面白かった。確かに作者の統一された美意識に基づいた破綻はただ小綺麗なだけよりよほど感動できたりする。こういうので成功するのは天然の場合がほとんどで、計算して破綻の美をやろうとすると計算して整ったものをつくるよりもずっと難しくなる。

以下『暗闇の中で子供』『九十九十九』『淵の王』の軽いネタバレ。

 たぶん『暗闇の中で子供』はミステリの『煙か土か食い物』を土台にそこから飛躍して意図した破綻の美をやろうとして、終盤はハチャメチャになりすぎてギャグっぽくなった作品。でも中盤までの整おうとする息苦しさが根底となったホラーテイストから一転、破綻・バラバラを隠しようもなくなった終盤のカタルシスには変な爽快感があった。

九十九十九』は最初から破綻を全面に出したコメディテイスト。終盤はその破綻が計算されていたと明かされて切ないドラマが生まれる。

『淵の王』は最初から最後までホラー。ホラーには不条理がつきもので、それがうまくコントロールされている。最後まで読むと3つの話の繋がりが大体わかるんだけど、別に気が付かなくても十分面白く読める。