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色々な雑記。

通過儀礼

映画『スタンド・バイ・ミー』って意外とジャンル分けの難しい映画だ。少年たちが町で噂になっている死体を探しに行くというだけの話のどこになぜ多くの人間が感動できるのかということでもある。

まず友情ものなのは間違いない。だけど少年の友情という言葉から連想される狭義の成長ストーリーではない。少年たちが努力により実力をつけて今まで立ち向かえなかった困難を克服する、というようなスポ根的な話とは全く違う。確かに主人公は死体探しを通じて何かを得た。噛み砕いていえば年の近い少年の死体を確認することで自分を含めた人間はいつか死ぬものだという当たり前だけど目をそむけたい事実を実感できたということになるかもしれない。この映画は大人になった主人公が自分の一番の親友だった(今は疎遠になっていた)相手の死を知るところから始まる。しいていえば通過儀礼を扱った映画ということになるはず。

個人的には『タッチ』も通過儀礼を扱った作品だと思う。『H2』はスポ根と通過儀礼が半々。『クロスゲーム』『MIX』も通過儀礼寄り。

新海誠監督の『天気の子』もこれらとは違った意味で通過儀礼的な要素が強い作品だ。家出少年である主人公は作中で彼なりに試行錯誤してはいた。それでも行ったことを見ればまっとうに成長して成果を出したとはとてもいえない。むしろかりそめに得たものの一部を失ったことと周囲に多大な被害を出したこと、それでもまだ残ったものを確認することにこそ、あの物語の意味があったように思う。

個人的な感想でいえば前作の『君の名は。』のほうがエンタメ的な満足度では上で、『天気の子』のほうが作風が好みだ。総合的にはどちらも同じくらい好き。