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色々な雑記。

宮崎駿監督の映画『風立ちぬ』の直接の原作は、宮崎監督自身が2009年から2010年にかけて月刊モデルグラフィックスに連載していた漫画だ。

当初映像化は考えていなかったが、鈴木敏夫プロデューサーの勧めで映画化したという。
漫画も一応の区切りはついているが宮崎監督監督曰く「未完」だという。そのためか、掲載号の月刊モデルグラフィックスの在庫が尽きるまで、宮崎監督は単行本化を拒否したそうだ。単行本の発行日は2015年10月8日。2013年7月20日の映画公開日からも1年以上遅い。
漫画版の『風立ちぬ』はあくまで余技の作品といった趣きが強い。「飛行機は美しく呪われた夢」というテーマはまだ打ち出されていない。映画と共通するシーンは多いが、ストーリーの流れはまだ未整理だ。
「美しいところだけ、好きな人に見てもらったのね」というセリフもない。家で二郎からの手紙を受け取った菜穂子が「いつもヒコーキのことばかり… つまんない」と独白で愚痴を言うシーンすら漫画版にはある。映画の仕事に理解を示す菜穂子は、やはり加代の言うところの「心配をかけないようにお化粧をした」姿なのだろう。そして二郎は薄々それをわかっていたし、だから残り時間の少ない菜穂子のやりたいようにやらせてやりたかったように思える。だが二郎としては、それを言い訳にして菜穂子とともに過ごす時間を少しでも増やしたかったのも事実だろう。だからこそ二郎は一人静かに葛藤していた。加代の非難にも真っ向から反論できず、ただ「僕らは今、一日一日をとても大切に生きているんだよ」と言葉を濁すしかなかった。