メモ帳用ブログ

色々な雑記。

月島も尾形も父親を殺害したことで父親を吹っ切るどころか呪縛されてしまった感がある。その隙を偽物の父親である鶴見につかれた。
鯉登は兄は失ったが、不器用なだけで自分を愛していた父親とはわかり合えた。鶴見には父性的な相手に対する初恋めいた憧れを抱いていたものの、自分の意志で卒業できた。
月島は親から愛されなかったがいご草ちゃんから絶対的な愛を受け取っていた。それでも父親のせいでいご草ちゃんが亡くなったと早とちりをし、父親を殺害する選択をしてしまい、そこを鶴見に絡め取られた。
宇佐美は生まれつきのサイコパスな面があり、農民生まれである点にコンプレックスがないでもないが、家庭環境は良好だった。鶴見には父親的な役割を全く求めなかった。伴侶になりたい気持ちを抑えつつ、時に嫉妬を爆発させながらも、部下のひとりとして活躍した。
となると、情緒が育つ要因に一番恵まれなかったのはやはり他者からの愛を感じられずに成長してきた尾形だろう。尾形は生まれつきのサイコパスというよりはソシオパス的な素質が育つ過程で開花し、自らも開花させる道を選んでしまった人間に思える。
尾形が罪悪感を持っていない自分に自己嫌悪を持っていることは色々な描写からよく伝わってきた。自分が実は罪悪感を持つ人間だという事実とはじめて向き合った時、焦ったことにも、自分は罪悪感を持つ祝福された人間だとわかって母親を殺した年頃の尾形が安堵したことにも、自分は深く共感できた。
だから勇作を殺したことではじめて罪悪感を自覚できたのは間違いない。ただ尾形の屈折した性格を考えると、母親を殺した時に芽生えかけていた罪悪感を無意識に抑圧し、自分で自分を罪悪感のない人間だと欺いていた可能性もある。この場合自分自身を欺いて形作った自己像に本気で自己嫌悪を抱いていたという複雑極まりない解釈になるが、尾形ならありえなくはない。