メモ帳用ブログ

色々な雑記。

月島が苦しんだのは、第150話でかつて鶴見になぜ自分を助けたのかと問い質した際の「そして私の戦友だから」という言葉を信じられなくなったせいだ。鶴見はこの言葉に続けて「月島おまえ… ロシア語だけで死刑が免れたとでも思ってるのか?」と言った。鶴見からしたらこの後に月島を救うために行った裏工作について話して恩を売ることこそが本題だったわけだ。月島も後にそのことに気がついてしまった。だから第210話で月島は「そして私の戦友だから」の顔を思い出しつつ、「私を救うのにどれほど労力を費やしたか訴えるわけです」と語った。鶴見は自分を利用するために戦友という言葉を使っただけだと理解してしまった。
一方で月島は、たとえ本当の目的を叶えるためだとしても、「満州が日本である限りお前たちの骨は日本の土に眠っているのだ」という言葉を鶴見が実現してくれることは信じていた。だからついてこれた面は大きい。
鶴見とアシㇼパ、ソフィアの会話を鯉登とともに盗み聞きした際も、最優先の目的ではないにしろ、部下たちの弔いを蔑ろにしそうな雰囲気ではなかった。部下たちの弔いは妻子の弔いと並ぶ、個人的だが重みのある祈りであり、本当の目的ではないがそのかたわらにあるものだった。本当の目的もウイルクとアシㇼパへの復讐のようなくだらないものではなく、日本の繁栄という正義を感じられるものだった。だから月島は安心できた。鶴見が国家繁栄のためなら妻子の弔いも、部下の弔いも、何より生きている部下さえも捨てられる人間だとは考えていなかった。
月島は牛山もろとも自爆しようとした際にも「そして私の戦友だから」の顔を思い出している。鶴見が自分を本当は戦友だと思っていないことはわかりつつも、命を救うために大変な労力を費やしてもらったことは納得している。いごちゃんの生存を教えてもらったことで「真っ暗な底からは抜け出せ」た。その恩義に報いるべく「利用されて憤るほどの価値など元々」ない自分の人生を使おうとした。だが鯉登は月島の自爆を止めた。鯉登には月島の人生は自分の命をかけても救いたいほど価値のあるものだったからだ。鯉登は月島が自分の人生を自ら侮辱したことを覚えていて、救いたいと思っていた。