メモ帳用ブログ

色々な雑記。

健やかに育った鈴芽にもわかりにくい心の傷や闇の深さはあり、それが旅を通じて克服される、というのがすずめの戸締まりのストーリーだ。自分は鈴芽という少女の明るい性格も、ふとした闇の見せ方も好きになった。多少お転婆なところだってあの年齢と基本的にいい人が多いあの世界ならむしろプラスだろう。みんななんだかんだと鈴芽の世話を焼くことで、かえってかけがえのないものを受け取っていった。
ただそうした深みの描き方が写実的かと言われればそうではなく、アニメ・漫画的なデフォルメが利いているため、馴染みのない人からは理解されにくい部分なのかもしれない。


死ぬのが「怖くない!」と叫んだ際の、ただの勇敢さでは片付けられない危うさ。草太に対する母親の代わりを求めるような、草太自身にに惹かれるような複雑な思慕と、母親をなぞるように草太を奪われてしまった際の異様なまでの焦燥。作中で客観的に美しく描写されている福島の風景を見てもそう感じられずに「黒のクレヨンで塗りつぶす、日記帳の白い紙」のように否認しようとしてしまう闇の深さ。そうしたアンバランスさは紛れもなく未成熟な鈴芽の魅力だった。そして鈴芽がそうしたアンバランスさを克服して将来本当の意味で成熟した大人になり、また違った意味での魅力を纏っていくことを願わずにはいられない。