メモ帳用ブログ

色々な雑記。

わたせせいぞう先生のいかにも80年代オシャレなイラストが好きだ。クリアラインスタイル(リーニュ・クレール)という様式らしい。様式自体はずっと昔からあるものだそうだけど、明快な色彩感覚や線と相まって、80年代の空気感を象徴している絵柄だ。わたせせいぞう先生のファンでクリアラインスタイルをとることの多い江口寿史先生のイラストも好き。同じくわたせせいぞう先生のファンのあだち充先生も、クリアラインスタイルではないけど、一枚絵のモダンさの傾向は近いと思う。

あだち充先生の絵だと、絵柄はゼロ年代の『KATSU!』の頃が特に好きだな。構図の力を一番感じるのは90年代の『H2』のあたり。先生の作品で最も脂が乗っていると感じるのは『H2』だし、構図をはじめとする演出力が話のパワーをより高めていた。

それにその頃に描かれたワイド版『タッチ』の表紙が本当に好きだ。どれもシンプルな構成なのに、絵に「圧」を感じる。現実感とは違う、この現実とはまた違った別の世界に触れたのを感じさせてくれるような、不思議な存在感。特に3巻の表紙には心を掴まれた。ワイド版の3巻は和也が亡くなる部分が収録されているんだけど、表紙に採用されたのは有名なその場面ではない。その前の試合、和也のエースとしての活躍にみんなが沸き立つ中、その野球場を達也がひとり外から眺めている場面だ。野球場に足を踏み入れようとする達也の周りには人影すらなくただセミの声が聞こえてくるばかり、そこに時折中からワッと歓声が漏れてくる。

あの時の達也は何を感じていたんだろう。