メモ帳用ブログ

色々な雑記。

風立ちぬ』の二郎は飛行機に対する愛情が揺らがない男だ。二郎自身自分がそういう男であることを自覚している。その思いは最終的に敗戦によって挫折を余儀なくされるけど、その過程が作中で描かれることはなかった。
その引き換えに気持ちが揺れ動く様が描かれているのが菜穂子だ。二郎と再会し婚約したばかりの菜穂子は、まだ自分の結核が克服できると信じていたようだ。だが徐々に自分に残された時間がなく、二郎とともに過ごせる時が僅かしかないことに直面せざるを得なくなる。
行動だけ見ると、菜穂子は自分から山の病院へ行くと言い、自分で山の病院を抜け出し、自分で山の病院へ戻って行くという筋の通らないことをしているように思える。だけどこれは菜穂子が優柔不断なのでも我儘なのでもない。菜穂子は自分なりに自分の命や死と向き合う中で、最後の気高さを得るために迷い試行錯誤する期間が必要だった。