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世界大百科事典 第2版「法の支配」の解説
ほうのしはい【法の支配 rule of law
法の支配は法治主義とは異なる。法治主義という言葉も人によって若干用法を異にしているが,基本的には,統治が議会の制定した法律によって行われなければならないとする原理であるといってよい。これに対して,法の支配は,統治される者だけでなく統治する者も〈法〉に従うべきであるということを意味する。そこでの〈法〉には,議会が制定した〈法律〉を超えた,自然法的な響きがこめられることになる。そのような〈法〉が,統治の各面を支配すべきだというのが,法の支配の精神の真髄なのである。

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「法実証主義」の解説
実証主義
ほうじっしょうしゅぎ
legal positivism
実定法 positive lawのみを法であるとする実定法一元論。実定法の上位に自然法の存在を認める自然法論と対立してヨーロッパの法思想を2分してきた。「悪法も法なり」 Dura lex,sed lex.「法律は法律だ」 Gesetz ist Gesetz.などの法諺が法実証主義に帰せられ,正義の観点を欠落させた価値ニヒリズムとして非難されることが多いが,少くとも近年の法実証主義は,認識と実践を区別し,認識の領域で自然法を否定するのみで,実践的な価値基準を道徳や良心の領域に保留ないし確保している場合が多い。このような法実証主義は,古くは J.オースティン,最近では H.ケルゼン,G.ラートブルフ,H.ハートらによって代表される。

他方、イギリスのような民主的な法・政治思想の伝統をもたず、民主的な政治制度の確立が不十分であったドイツでは、法治主義の思想はかならずしも民主政治の発展を保障するものとはならなかった。なるほど19世紀前半にモールが国民の権利保障を内容とする法治主義立憲主義の思想を展開したが、その思想も、続くシュタール、グナイストらによって、法律によりさえすればいかなる政治も合法的であるという形での法治主義に矮小(わいしょう)化されてしまった。こうした考え方はワイマール共和制下にあっても根強く残存し、その末期には人権保障や議会政治を無視する大統領内閣による統治が行われ、そのことがヒトラー登場の要因となった。第二次世界大戦後の西ドイツでは、法治国家の確立を目ざすとともに、社会正義を実現する「社会的法治国」たることを定めた憲法を制定したため、ようやくドイツも民主国家となった。

例外も多いが、概ね英米系が「法の支配」を重んじ、ドイツなどの大陸系が「法治主義」を重んじる。
「法の支配」の統治者も「法」に従うべきという精神は民主主義として完全に正しく思える。しかし自然法や民主主義がキリスト教的価値観を前提にしすぎているという現代的な批判も極めて妥当だ。
自然法を否定する法実証主義のほうが現代において現実的だ。だが現代の法実証主義者自身が少なからず意識しているように、「実践的な価値基準を道徳や良心の領域に保留ないし確保」することは怠れない。でなければ「悪法も法なり」となり、第二次世界大戦前後のドイツのように「法律によりさえすればいかなる政治も合法的であるという形での法治主義に矮小化」されてしまいかねない。