メモ帳用ブログ

色々な雑記。

なぜ養豚場の豚や養鶏場の鶏の餌に予め抗菌性物質(抗生物質や合成抗菌剤の総称)が混ぜられているのかという話だ。家畜、特に食肉用の家畜の場合、死亡率が問題になるのは主に生まれてから人間でいう成長期が終了して出荷されるまでの期間だ。あれだけの密度で幼い家畜を飼育するのなら、感染症の爆発的な流行を予防するために抗菌性物質に頼りたくなってしまう。別に畜舎の掃除をサボるために抗菌性物質を投与しているのではない。しかし広く知られているように抗菌性物質の乱用には弊害も多い。かつては食品に残留する抗菌性物質の害が問題となったし、近年は抗菌性物質の常用によって薬剤耐性菌が発生する問題が注目されている。弊害が最小限となるよう規制が強化されているが、今はまだ見落とされている問題がないとは限らない。それでもやはり、現状で畜産物の大量で安定した供給を求めるならば抗菌性物質に頼らざるを得ない部分はある。ブランド豚などなら代わりにワクチン接種を行っている場合もあるが、コストは高くなる。
個人的には、安くてそれなりに美味しい肉の安定供給のためには、リスクとコストを見極めた上で抗菌性物質を適正に使用するのが得策だと思う。もし将来的に抜本的な家畜の衛生革命が起きて、低コストかつ薬剤も不要な飼育方法、とかが出てきたらそれを採用しない手はないけども。
現在の人口を伝統農法だけで支えようとしたら戦中戦後以上の食糧難に陥るのは確実だ。だが効率やコストパフォーマンスだけを追い求めていれば文化は貧弱化する。現状でも、グルメかつ意識の高い食事のために、高コストと広い土地を要求する伝統農法で生産された畜産物は存続している。高級路線と高コスパ路線の両方が選択可能なことは社会の自由度、ひいては社会や文化の豊かさに繋がっているはずだ。