メモ帳用ブログ

色々な雑記。

ジャック・ザ・リッパーは明らかに尾形を掘り下げるために用意されたキャラクターの1人だ。
ジャックが自分にそっくりな母親と王族の父親が愛し合って生まれた子供だというのはまずありえない。フィクションのお約束としても、現実的にも。それがあり得るならかの有名なクヒオ大佐だって本当に大佐だっただろう。貴族の父親というならまだ解釈が分かれる余地はあった。
考えられるのは、母親はどうもジャックから金銭的な援助を受けるために声をかけたようだし、その金額を釣り上げるために自分はかつて王族から愛されただけの価値のある女なんだとアピールしたかったか、ジャックの父親はクヒオ大佐のように嘘の経歴で女を食い物にする男だったか、といったところだろうか。バレバレの嘘で母親が自分を騙そうとしたにしろ、母親がバレバレの嘘で父親に騙されたにしろ、それなり頭が回りそうなジャックはすぐにその嘘に気付いただろう。そして愛という嘘で人を食い物にする行いにも、自分が愛し合って生まれた子供だという嘘にも、深く傷ついた。現実を拒否して自分は処女の母親から生まれた神の子だという妄想に取り憑かれたばかりか、娼婦を次々と殺害するようになる。娼婦は子供を作るために性交しているどころかむしろできたら困る場合がほとんどで、そのためにジャックは捨てられたのだろうが、性交を嫌悪し自分の母親と娼婦を同一視するジャックは、あの女たちは性交をしないと子供が作れないと嘘を言っているという被害妄想により娼婦たちを糾弾した。ジャックはアシㇼパにもあなたは処女の母親になれるしあなたも処女の母親から生まれたはずだと迫るが、アシㇼパは自分は両親が愛し合って生まれた子供だとジャックを否定する。このエピソードのテーマとしても、作品全体の描写からしても、アシㇼパは正真正銘ウイルクとリラッテが愛し合って生まれた子供なのだろう。ジャックの妄想は完膚なきまでに打ち砕かれた。だがこれで終わると愛し合って生まれた子供は善になり嘘の愛から生まれた子供は悪になるというテーマに誤解されかねないため、杉元が誰から生まれたかより何のために生きるかだとテーマをより詳しく語っている。