メモ帳用ブログ

色々な雑記。

樺太から帰ってからアシㇼパ・杉元パートの魅力が落ちたのは2人が積極的になれる中期目標を設定できなかった点が大きいと思う。
ストーリーの終着点が2人が金塊を手に入れることになるのはわかりきっているし、囚人の入れ墨を集めるという短期目標もあるけど、それだけで長期連載を引っ張ると退屈になる。
樺太編までは
まず梅ちゃんの手術費用のために金塊を手に入れたい杉元と父親を殺した男を処刑させるために金塊を誰かに手に入れさせたいアシㇼパが手を組むというところからはじまって
→実はアシㇼパの父親が生きており網走監獄でのっぺら坊になっているかもしれないから確かめたい。できれば金塊の隠し場所も直接聞きたい。
→確かめたが父親は殺されてしまった。アシㇼパは襲撃から逃げつつ樺太で父親の足跡を追いたい。杉元は騙されて誘拐されているアシㇼパを取り戻したい。ストーリー上の謎としては、キロランケと尾形はウイルクがアシㇼパに託したはずの金塊の暗号を解く鍵を思い出させたい、という各キャラが積極的になれる中期目標があった。
樺太から帰還して、アシㇼパは鶴見には金塊を渡せない、杉元は金塊の分け前さえもらえるならいくらでもアシㇼパに付き合いたい、と再スタート。ストーリー上の謎としては鍵で暗号を解読するとどんな結果が出るのか、という点が用意されている。ただこの最終目標を再確認して振り出しに戻ったような状況から各キャラが積極的になれる中期目標を設定できなかった。アイヌの未来のために金塊を勝ち取るか、争奪戦から下りて杉元と平穏に暮らすかという迷いができて、それを振り払うための成長はあったが、それまでのアシㇼパの前向きさとは正反対の感情だった。作品性に深みは生まれたがエンタメ性が減じた印象は否めない。途中で再び同盟を組んだ土方勢力は金塊を資金源にした北海道独立戦争や工業化を考えており、戦争を回避して自然に息づくカムイを守りたいアシㇼパとは長い目で見れば対立するはずだった。しかしアシㇼパや杉元のキャラ性からすると自分から土方への裏切りを考えるような展開にはできなかった。そのためにアシㇼパは土方勢力が壊滅するまでは金塊の使い道について何も考えることができなかった。ソフィア率いるパルチザンとの関係に関してもそうだ。一応、アシㇼパは父親がアイヌを殺したとされている事件の真相を知りたいとは考えていたが、そのためにアシㇼパができることは何もなく、鶴見に捕まった際に一方的に真相を語られることになる。正直、ウイルクの人気からすると名誉回復のための真相が気になる読者も少なかっただろう。