メモ帳用ブログ

色々な雑記。

詳しくないことに軽率に言及するととんでもない知ったかぶりになるから注意しないとだな。
修正版。
作中で杉元が、「倒れし兵士を抱き起し 耳に口をあて名を呼べば」と、当時の流行歌である『ラッパ節』を歌っている。『ラッパ節』は日露戦争などを題材にして当時の世相を風刺しており、厭戦色が強い。第6巻のおまけで二階堂がもっと長く歌っている箇所からわかるように、この「倒れし兵士」は死にゆくところにある。
『ラッパ節』は当時の流行歌の例に漏れず、多数のバリエーションや替え歌が作られ、「倒れし兵士」が「倒れし戦友」となっているものも有名だ。
ラッパ節


日露戦争の戦友を題材にした当時の流行歌には、まさに『戦友』というタイトルのものがある。やはりこの歌でも戦友は亡くなっており、歌詞の類似性も高い。『戦友』の倒れた戦友を手当てしようとする箇所は軍法違反として問題視され、修正を迫られたという。

日露戦争後の改定を経た歩兵操典でも第一篇各個教練第四章戦闘間兵一般の心得の部分に以下のようにある。

第79
兵は戦闘中に負傷するも自ら応急の処置を施し、百方手段を尽くして戦闘を続行すべし。縦い戦闘に堪えざるに至るも後退すべからず。然れども、若し小隊長以上の指揮官より後退を命ぜられたるときは、擲弾筒、軽機関銃、眼鏡等部隊装備の兵器、拳銃、弾薬及び資材を戦友に交付し、小銃、銃剣、防毒面等は之を携帯して、徐ろに退くものとす
第80
兵は常に自ら進んで指揮官の掌握下に入ることに勉むべし。所属部隊を離るるは、特に命ぜられた場合に限るものとす。戦闘中、命令を受けずして負傷者を介護、後送し、或は任務遂行後の復帰遅緩するが如きは軍人の本分を傷つくるものなり
兵、若し所属部隊の所在を失いたるときは、直ちに最寄の部隊に合し、速やかに将校に届出で、其の命令に従うべし
歩兵操典 一篇 四章

鶴見陣営が軍法違反の集団だというのを置いておいても、大泊で月島が任務に支障をきたしてでも鯉登の手当てを続行したことは軍法違反ものだ。厳選な鬼軍曹にあるまじき行いだが、月島にとって鯉登は既にそうした判断を超えた存在になりつつあった。