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色々な雑記。

芹澤本は


芹澤がマッチングアプリで知り合った垂れ目がちで優しそうな30代の美女である真菜に草太を重ねるというファンサービス込みの要素が若干アレだけど、もしネットで出会いの約束をしたのが30代男前だったら若干アレどころじゃないから、ここはそういうもんだと受け入れる。友達と険悪になったと勘違して落ち込んだ末にナンパに走ることだってまああるだろう。
芹澤は真菜に「寂しい時なんてない」と言われて納得してしまい、草太が自分のLINEに既読すらつけないのはそういうことかと早合点した。だがひとりで酔い潰れて相手を放置し、振られ、連絡も取れないようにされてしまった。愛想を尽かされた。そりゃマッチングアプリに登録する女性は寂しくて交流する相手がほしいからそうしているに決まっている。芹澤は真菜のちょっとした強がりを真に受けてしまった。
真菜は30代で、少なくとも建前上は独り身だ。おそらく自立している社会人だろうし、芹澤もそういうつもりで接しただろう。仕事をして既に何者かになっている真菜の悩みは、アルバイトで生計を立てているとはいえまだ半人前の自分にはとても受け止められない、愚痴をこぼす相手と見なしてもらうラインにすら立てなかった、真菜に振られて芹澤はそう感じたはずだ。芹澤は真菜が何者であるかすら知らないまま見放された。
芹澤は風邪で寝込みながら、「お前は自分の扱いが雑すぎる」と草太に叱られたことを思い出す。自分は正しくない行いに流されてしまったために、草太に愛想を尽かされたのだと考えた。草太だって真菜のように寂しくならない訳ではない。だがそれ以上にもう自分とは連絡もしたくないという気持ちのほうが強いのだと思い込んだ。
そうしてどん底に沈んでいるところで草太が芹澤の部屋のドアをノックする。これは映画本編で芹澤が草太の部屋のドアをノックした状況と揃えてある。
草太は芹澤の看病をしつつ、家業の手伝いのために連絡が取れなかったのだと説明した。芹澤は自分が草太から愛想を尽かされた訳ではないことを知った。むしろ草太は連絡が取れなかったという理由で芹澤の家を訪ね、自分が心配をかけたことも申し訳なく思っている。芹澤はすっかり安心し、体調も戻った。こうした体験があるのに「一方的に俺に心配ばかりかけ続ける草太」と芹澤が認識し、草太も芹澤を心配していることに気付いていないのは鈍すぎと思わなくもないが、大学生ならそんなもんだろう。
人心地ついた芹澤は今度は草太の事情が気になってくる。草太は今回の2週間以上連絡が取れなくなった件だけでなく、すぐ前にも出席に厳しいゼミを連続で欠席するというのっぴきならない状況に陥っていた。芹澤は、背負っている「仕事」について草太に尋ねてみるが、草太は泣き出しそうな声ではぐらかすばかりだった。草太はこれまでも、この後も、愚痴らしい愚痴さえこぼすことはなかっただろう。
この時の草太の寂しそうな様子が芹澤は忘れられなかった。映画本編で草太が急に姿を消した際は自分がなんとしても救わなくてはと決意した。
結果、草太を直接救出したのは鈴芽だけど、芹澤も貢献したぞ。