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色々な雑記。

日月同错は概ね現代中国的な価値観に基づいたストーリーになるんだろう。現代中国的な価値観とはどんなもんなのか。
とりあえず中国のウェブ小説・ウェブ漫画では仙人とかは人気の題材らしい。中国哲学は不老不死に肯定的だし、人間が神仙の域にまで(霊的に)出世することも好ましく捉えられる。日本人は長生きだけしても目的が伴わなければなんの意味もないとか、偉くなっても目的が伴わなければなんの意味もないとかいう風に考えがちだけど、中国哲学的には長生きして(霊的に)偉くなってどこからも束縛されない立場になること自体が目的だそうだ。こういうバイタリティ溢れる姿勢には尊敬できる部分も多い。
求法者は作中で道士とは違うと言及されているので厳密な神仙思想や道教思想がそのまま当てはまる存在ではないみたいだ。ただし姜明子は仙人と明言されていて、不老不死ではないものの若さを数十年保っている。なんとなくの仙道的なイメージと重なる部分は多いし、重ねることを前提の作りになっているはずだ。
伝統的な中国哲学では道教思想と並んでというか、それ以上に重要なのが儒教思想だ。ただ日月同错は舞台が清朝末であり近代的価値観に転換しようとしている時期なので、こうした伝統的価値観には肯定的な評価をしていない部分も多い。主人公は使える人間の限られる方術よりも科学の力に関心があるし、血の絆の大切さが描かれる一方で血に縛られた悲劇も描かれる。
現実の儒教辛亥革命以降の中国で魯迅らによって人食いの原理として批判されることになる教えだ。さらに中華人民共和国でもより厳しい批判が加えられた。ただし現在も生活の中では儒教に基づいた伝統的家族観が息づいているという。伝統的な道徳観は切り捨てるにも受け継ぐにも難しい部分がある。