メモ帳用ブログ

色々な雑記。

黒山村のエピソードでストーリーと直接関係ないけど納得しにくい部分について。日本語版と中文版で異なる部分はすべて中文版準拠。
屍者という化け物や超能力が現実に存在する世界で、西暦525年の屍疫のように住民の約半数の四肢が徐々に欠損していく異常事態が発生したら、まずは屍者か悪の求法者が呪いをかけたと考えるのが普通だと思う。現実だと昔はただの疫病を呪いと誤解してしまった例はいくらでもあるが、(当たり前だけど)逆はない。白大の医学への傾倒ぶりを示したいにしても、あんな症状ならまず呪いへの対処を考えるのが自然じゃないだろうか。まして白大は屍者の噂を聞いたことがあったんだし(日本語版だと白大は奇病の正体が屍者の術だと聞かされて「そういうことだったのか!」と驚いている。中文版だと「果然!」「やはり!」と前から疑っていたことに確信を持てた言い方)。さらに白大の処方した薬草は症状を和らげられたけど治療はできなかったようだ。その程度の薬草の採取に往復半年かけている暇があったら街に出て法師なり高名な医師なりに相談しようとか考えないんだろうか。さらに言えば屍者の噂を聞いた他の村人も誰一人屍者が原因の症状だと考えなかったようだ。村人たちにどういう思考力があるのか理解できない。どいつもこいつも生きた人間ではなくシナリオの進行に合わせて動くだけのオブジェクトでしかないことを露呈している。
ついでに言えば、歪められた伝承の内容は、村に奇病が流行って薬売りが仙薬を仕入れてきたがその薬を飲んだ人間はみんな死亡したというものだ。一応その薬は実は(中文版では)白大の血だったといういかにも怪談的な要素がありはする。しかしこの伝承を聞いても白大が悪人だったと頭から信じ込めるような内容だろうか。この伝承から実際の出来事を想像してみても、ただ奇病の治療法がわからずに助けられなかっただけではとか、治療薬を手に入れたものの既に手遅れだっただけではとかいったごくありふれたことがすぐに思い浮かんでしまう。なにせ病と考えるなら考えるで四肢が徐々に欠損していくというのはとんでもない症状だ。突然どんな悪化の仕方をしようが何もおかしくない。普通の流行病でも大量の死者を出すのが当たり前だった時代に謎の奇病に対処できなくても当たり前だとしか思えない。
それに手に入れた仙薬とやらが騙されて売りつけられた偽物の薬だったという可能性も想像できる。というか、自分は第4話の時点で一瞬そう疑ってしまった。
村民の大量死の責任を意図的に白大へ押し付けるなら、白大が実は法屍者で村に奇病を流行らせたのも村人を殺したのもすべて白大の計画だったとするほうがスマートだと思う。少なくとも当時の村人は屍者化した白大に復讐されたと本気で誤解していたはずだ。ついでに白大が悪の屍者ということにしておけば、村で起きた異常事態は差別の原因にされかねない伝染病などでなく、他所にうつる心配のない呪いだと公表することもできる。伝承は実はそういうことを仄めかしているのかもしれないと疑ってみたけど、白大は実は医術の知識に乏しくて村人で薬の効き目を試したとかいう怪談になっているようだし、ストレートに白大は悪い人間だと伝えているんだろう。昔の黒山村の人間は単なるオブジェクトだから仄めかしとかできなさそうだし。
それに、メタ的には白大を屍者とする伝承が残ると村に屍者への不信感まで伝承されてしまうので、清朝末に蘇った三眼にかつて村を苦しめた張本人と知らないまま従ってしまうという筋書きに無理が出る。だから筋書きのために不自然なくらい屍者の存在が削られた伝承が残された。
メタ方面以外から考えると、あの世界はもしかしたら歴代王朝で公的には屍者が存在しないことになっているのかもしれない?だから歴史として屍者のことを語り継ぐのが憚られたとか?というか作中の伝承はいつごろどういう経緯で今の形になったのやら。とりあえず白大の妹の子孫がなぜか黒山村に戻ってきて以降だろうか。
村人の白大に対する認識が千年の間にどう変化していったかを想像してみる。
(事件当時の認識)疫病でパニックになった村人が白大の家族を殺したら、屍者化した白大が復讐しに来て村人が吸収された→
(認識と伝承の中間を補う一案)白大の正体は屍者で、たまたま流行った病気に便乗して村人に薬を与えるふりをして自分の血を飲ませ、その血を通じて村人を吸収した→
(現在の伝承)悪い人間である白大は実は医術の知識が足りておらず、仙薬と称して自分の血を飲ませて効果を確かめてみたが効かず、症状の悪化した村人は全滅し白大は失踪した