メモ帳用ブログ

色々な雑記。

日月同错は閉じて停滞した世界が外と繋がることで進歩していくということがテーマのひとつだ。ただ、初っ端から主人公が大きすぎる失敗をやったせいで、余所者が物事を下手にかき回したばっかりに酷い結末を迎えたように見えかねないところは危ない。主人公が馬鹿な失敗をやりすぎて、反面教師である三眼がマシなように見えかねないところも危ない。さらに日本語訳はそれを助長している。
高皓光は未熟な正義感を暴走させてしまったけど、序盤の主人公としてはまあありがちな態度ではある。でも自分の正義感の独善に気がつくという主人公らしい反省ができたのに、結局何もできず村人を救えなかったのは主人公にあるまじき失敗だ。その後で瀕死の白小小を救おうとした時もいかにも主人公らしい勇ましさだったのに、村人に対する選択を失敗したことが響いて、やはり命を救うことはできなかった。とにかく黒山村編ではお約束を悪い方向に裏切ることに力が入れられている。中文版では、高皓光が白小小との初対面のときに、人間は延髄を叩いても気絶しないし舌を噛んでも死なないとお約束にツッコミを入れる発言をしてもいる。
不幸な白小小が三眼からの押し付けで復讐に走り、ついに死んでしまうのもかなりお約束の逆を行く展開だ。ただし自分の意思で復讐を放棄できたおかげで、最期の最期とはいえ山の外に出ることができ、外の世界を見ることができた。呪縛を破った結果だけど、同時にこれすらも運命に定められた結果でもあるという難しい問題だ。
三眼が白家に恩義があるようなことを語っていながら、結局害しか与えずに滅ぼしただけというのもお約束の逆を行く因果な問題だ。同じく三眼が関心を注いだ対象でも、苗木と白家は正反対の運命を辿ったように自分には思える。苗木は一千年前に三眼に植えられ、大きく育ち、他の木に紛れようと三眼から一目で見分けてもらえ、物語の後もあの場所から動かずに生き続ける。白家は千年前に三眼の屍疫が引き起こした事件のせいで不幸のどん底に叩き込まれ、復活した三眼の確認不足によって生き残りがひとりだけになり、ついにはその生き残りである白小小すら死んでしまう。しかし隣村に嫁いだ白大の妹の子孫が黒山村に戻ってくるという不合理な移動が悲劇の一因になった一方で、白小小は最期に村の外に出るという移動によって救われもした。三眼が押し付けてきたものから解放された。こういう風に対照的な苗木と白家だけど、三眼がそれを理解していなかった可能性はなくはないのかもしれない。個人的にはさすがに理解していたと思いたいけど、もし理解していなかったのなら、人間の連なりである白家は三眼から個体の苗木としてのあり方を一方的に押し付けられたせいで滅んだことになる。