■

黒山村編は逆張りが多い。ホラーとしてはあえて気持ちいい方向の逆を行くのは間違っていないけど、筋が掴みにくくなっているところがある。
白小小が三眼に自害を命令したこと自体は全うだ。三眼は白小小の両親を食べた殺人の実行犯だ。屍者が人間を食うことも当然だと考えているし、生かしておいても改心しないだろう。
生贄を持ちかけた村長は殺人の共犯者なので、白小小に殺されても仕方がないと言えなくもない。発達した社会では同害報復は禁じられる場合が多いけど、なんだかんだ心情としては納得しやすい。高皓光も村長は進んで白小小に差し出そうとした。
その他の村人は、事前に村長から計画を聞いていた人間がいたとしたらそいつも共犯だろう。ただ、自分や家族に危害が及ぶことを恐れて白家を助けられなかった人間に関しては難しい問題になる。あの状況で白家を庇えば代わりに生贄にされてしまうのは目に見えている。危機に陥った村人を見殺しにするのなら同害報復といえるかもしれないが、積極的に殺すのは過剰な報復になってしまう。ただ、白小小が自分たちを見殺しにした人間まで皆殺しにしたくなる気持ちはわかる。三眼からそうするように仕向けられてもいる。
黒山村の理不尽は三眼が現れたことに端を発しているので人間だけでは解決しようがないところはある。
ややすっきり纏める方向の退魔ものなら、三眼の術で村人が邪悪な心に見合った化け物になり、暴走して化け物同士殺し合う、白小小は子どもたちとなんとか逃げ延び、村人を見殺しにしたことを悔いるが、高皓光に村人は自業自得だと慰められる、みたいなのがありがちか。ただこれだとテーマ性皆無の話になってしまう。あえて白小小が手を汚す方へ話を運んで、そんな白小小は止めるべきか否かってのがテーマ的に重要な部分だ。