メモ帳用ブログ

色々な雑記。

政治経済は一般教養の講義で取って以来纏まった基礎の学習を疎かにしていたので、この機に纏まった基礎の新しい本を何冊か読んでみた。
自由・平等・博愛はフランス革命のスローガンであり、近代思想を代表する言葉だ。だが自由と平等には両立が難しい部分がある。そのためどの分野ではどちらかを優先するかに政策の特徴が出る。
まず、大まかには左翼が平等重視で右翼が自由重視とされる。日本人には感覚的にわかりにくい。だが英米からするといかにもしっくりくるのだろう。経済学者・哲学者のハイエクは、通常では極右に分類されるファシズムも、共産主義と同様に全体主義であり左翼だと位置づけた。ハイエクは1930年にオーストリアからイギリスへ移住し、そののちにはアメリカに移住する。
一方、西欧・北欧ではフランス革命以来労働者の権利を重んじる気風がある。左派の社会民主主義政党の勢力も強い。平等が必ずしも全体主義と結びつくものではないという意識がある。
マイノリティ政策では、個人がマイノリティとしてのライフスタイルを送る自由を保障するように求めるのが右で、マイノリティがマジョリティと平等になるための政策を求めるのが左だ。
自由主義は本来の意味では政府の介入を最小限に抑えようとする思想だ。だが1929年を皮切りに大恐慌が起きた際、アメリカでは民主党が社会経済政策によって問題を乗り越えた。この改革により自由主義という国家の理念が守られると主張し、社会主義的あるいは集産主義的政策との批判を跳ね除ける。1930年代のアメリカでは大恐慌の克服が待望されていた。それを政策として叶えたのが1933年に始まるニューディール政策であり、理論として完成させたのが1936年にケインズの発表した『雇用・利子および貨幣の一般理論』だ。以来アメリカにおいて自由主義政党=リベラル政党は公共事業や福祉に力を入れる中道左派政党として認識されるようになる。この中道左派リベラリズムを他のリベラリズムと特に区別する場合はモダンリベラリズム、ニューリベラリズム、ソーシャルリベラリズムなどと呼ぶ。第二次世界大戦後の勝利を経て、ケインズ主義の正当性は揺るぎないものされた。欧米では福祉や労働者政策に積極的に取り組む中道左派が大きな力を持った。
しかし1960年代末の景気悪化で、ケインズ主義は求心力を失っていく。
代わって1980年代から表舞台に立つのがハイエクらの唱えた古典的自由主義 (クラシカルリベラリズム)や、古典的自由主義を手本とするネオリベラリズムリバタリアニズムだ。新自由主義政策をアメリカにおいて推し進めたレーガン大統領は保守主義者であり、イギリスにおいて推し進めたサッチャー首相は新保守主義者である。サッチャーハイエクを信奉していたことはよく知られている。
ハイエクは無知な人間が設計主義的合理主義で市場を制御しようとするよりも、市場の自生的秩序とその進化に任せたほうが社会は正常に働くとした。市民一人一人の知恵が有効に活用されるためにも、市民一人一人が活動にふさわしい生活を送るためにも、自由な市場こそが不可欠だと考えた。ハイエクは所得格差を職業に対する社会の需要の指標として是認した。一方、強制保険と最低限の公的扶助は必要だともした。
1990年代後半にはアメリカとイギリスで政権がリベラル政党に交代する。どちらも新自由主義政策と政権本来の手厚い福祉政策の両立を図ることを公約にした。イギリスのブレア首相は第三の道というスローガンを掲げる。しかし政策内容は新自由主義路線を色濃く継承していた。
近年の英米を主導し続けた新自由主義だったが、2008年のリーマンショック以降見直しが迫られている。リーマンショックの背景には新自由主義的金融政策とグローバリズムがあった。