メモ帳用ブログ

色々な雑記。

鶴見は部下に対する愛も情も全くなかったと言い切れてしまえばわかりやすいんだけど、そういう明快な男ではないのが鶴見だ。
ただ月島が鶴見の部下に対する心からの愛情を全く信じていなかったことははっきりしている。
まず自分の体験からして、鶴見が愛情を注ぎ込むという名目で部下の人生を操作して心身ともに支配しようとする男であることは理解している。いざとなったら鶴見は鯉登を消し、その命令を実行させられるのが自分だというのは、鯉登を押し留めるための脅しだが、同時に鶴見がそうすることを確信しているから何があろうと回避したい未来でもある。
また、樺太で鯉登が杉元に刺された際の態度を見たことで月島は鶴見が部下を愛していないと再認識しただろう。このやり取りの前後は単行本版でかなり加筆されており、はじめは「みんなが幸福になる未来を目指す (中略) アシㇼパにもぜひ協力してもらいたい!」と言っていた鶴見が問答するうちにウイルクとアイヌへの敵愾心をあらわにして、鶴見に対して月島が「優しい嘘はどうした?」と思う場面も単行本で追加された箇所だそうだ。月島はこの時、はじめは普通だった鶴見が口論で怒りに任せた言葉を発してしまったと考えたのではなく、はじめは嘘をつけていた鶴見が本音を口走ってしまったと考えている。そしてこの月島の独白は同じく単行本で追加された独白である「嘘でも心配したらどうですか」と対応している。この時鯉登は重症を負っており、嘘をつく余裕のない鶴見は鯉登に冷たい一瞥を投げただけだった。月島から見ればいつもの部下に対してサービスのいい鶴見は演技で、今の冷淡な鶴見が素だというわけだ。
それにしても鶴見の「みんなが幸福になる未来を目指す」系の言葉って本当にすぐ捨てられる建前でしかないんだな。