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三眼は西暦525年でも西暦1906年でも人間の死体を傀儡にしていた。西暦1906年の死体は三眼が襲った近隣の馬賊か村人、それか黒山村以外の2つの村から捧げられた生贄のいずれかだろう。黒山村の生贄である白小小の両親はすぐに食われた。

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《日月同错》第三回 千年之谣 下-在线漫画-腾讯动漫官方网站 4/21

 

三眼が食った人間の骸骨の一部。

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 《日月同错》第三回 千年之谣 下-在线漫画-腾讯动漫官方网站 13/21

 

黒山村の村長は三眼の千里眼の能力を正確に把握していた。三眼と生贄契約を結ぶ時に教えられたのかもしれないし、隣村で1人が逃げようとして一家全員が殺されたという話が本当ならその時に察したのかもしれない。

 

三眼の神通は傀儡化の能力だ。傀儡にした人間同士を殺し合わせる。

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《日月同错》第八回 千年神通 下-在线漫画-腾讯动漫官方网站 5/23

 

三眼は姜明子と自分の戦いを自分の都合の良いように記憶改変していたりと、意図的な嘘はついていなくても認知に問題がある。西暦525年の事件でも、自分が屍疫を蔓延させて半年以上に渡り村人の四肢を欠損させていったことは軽く流している。

特に自分が気持ち悪かったのは、村人百人近くを殺害するのに白大の死体を傀儡にして使ったこと(中文版準拠)をまるで美談のように語ったところだ。そもそもの元凶に復讐を頼むしかなかった時点で白大は悲惨だけど、その上に自分の死体が勝手に使われて、その余波が妹の子孫に後々まで影響したんだから悲惨の極みとしか言いようがない。三眼は自分の思わぬめぐり合わせを「天意弄人」と嘆くけどそれが言えた義理なのか。その後に三眼が白大の死体を供養したことを一件落着を迎えたように語るのも釈然としない。百歩譲って生前の白大と三眼が親友だったら死体に仇討ちをさせるのも受け入れられるけど、実際は逆だ。

こういう三眼の認識のズレからは、中国の一部で行われている冥婚をターゲットにした悪徳ビジネスを思い出さなくもない。

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冥婚と呼ばれる風習は世界各地にある。山西省広東省江蘇省などで行われる冥婚は、未婚で亡くなった男性と未婚で亡くなった女性を結婚させる儀式だ。花嫁となる遺骨を買い取って墓から掘り出し、花婿の死体とともに埋葬する。「中国人の多くは、死者の願いをかなえないとバチがあたると信じている。冥婚は、死者を鎮める方法なのだ。」という。それ自体は文化だし宗教だし一概に否定されるべきものじゃない。それでも冥婚ビジネスを背景にした殺人は大問題だ。

「冥婚には、女性側の親族にもメリットがある。農村では、未婚女性は先祖の怒りを買うという理由で家の墓に入ることができない。そのため、未婚の娘が亡くなると、田畑のそばに埋葬にされることになる。」という点も興味深い。こうした儒教的価値観の根深さを知ると、白小小が最期に両親と再会できたと思えたことに対する印象もまた変わってきそうだ。白小小は他人である子どもたちにとっての親の仇になったことを自覚し、自分の一族を途絶えさせる道を選んでしまった。しかしそれを両親や先祖にも受け入れてもらえると思えた。儒教的旧弊を捨てられた白小小の場合は、黒山村の領域に葬られなかったことがかえって救いになっただろう。中国は広いので土地によって価値観は変わってくるだろうけど、黒山村は徐州府の近くで、中文版では江蘇省には教会や宣教師が多いから子どもたちのことは安心して(おそらく当時まだ江蘇省の一部だった上海のこと)というセリフもあるので、江蘇省でほぼ間違いない。

一方の現実でも、今も未婚女性が本人の望みに関わらずに普通の墓に入れない問題が、いずれは根本的に解決するのを願いたい。ただ、さしあたっての解決策として有用なのが同じく儒教的価値観に基づく冥婚だという点は無視できない。現状に問題があっても、根本的な解決にはならなくても、その中で少しでもより良い方法を取ろうとすることは決して無意味ではないはずだ。