メモ帳用ブログ

色々な雑記。

進撃の巨人で主人公・エレンはヴィリー・タイバーを襲撃する直前、かつての仲間だったライナーと接触を図った。そしてライナーが自分と同類だと確認して腑に落ちた表情をした。ライナーは少年兵に下された命令だったとはいえ、中止できなくもない状況で任務を強行し、民間人を含めて敵を大量虐殺し、その過程で仲間を苦しめ相棒のベルトルトを死なせさえしたことを悔やんでいた。エレンの「『仕方なかった』ってやつだ」という言葉や「お前…ずっと苦しかっただろ?」という言葉をはねのけ、時代や環境が悪いのではなく自分が悪いのだと懺悔していた。こんなライナーと自分が同じだと感じたということは、エレンも内心似たような葛藤を抱えていたのだろう。エレンは自分自身の性分に関して「多分…生まれた時からこうなんだ」と呟いた。この呟きと、エレンとライナーの自己嫌悪が同種だというのは終盤においてもクローズアップされる。またエレンはこの以前にも素性を隠して敵勢力の少年と接触しこう語っていた。

心も体も蝕まれ
徹底的に自由は奪われ
自分自身も見失う…
こんなことになるなんて知っていれば誰も戦場になんか行かないだろう
でも…皆「何か」に背中を押されて
地獄に足を突っ込むんだ
大抵その「何か」は
自分の意思じゃない
他人や環境に強制されて仕方なくだ

ただし
自分で自分の背中を押した奴の見る地獄は別だ
その地獄の先にある何かを見ている
それは希望かもしれないし
さらなる地獄かもしれない
それはわからない
進み続けた者にしか…分からない

エレンとライナーは「自分で自分の背中を押し」、普通とは別の地獄を見た人間だということだ。

エレンやライナーと対象的に、「他人や環境に強制されて仕方なく」地獄に足を突っ込んだ人間の1人がベルトルトだった。ベルトルトは元々潜在能力は高いが意志が弱く流されやすい人間だった。潜入工作とはいえ何年も交流を深めた相手に憎まれ心を痛めることもあった。そんなベルトルトだったがある任務の直前には自分自身の決断で覚悟を固め、エレンたちに立ち向かってくる。その覚悟は命令に従う戦士としてのものだった。ベルトルトはアルミンと対峙して交戦の意志を確認する。そして落ち着き払いながらこう独白した。

きっと…どんな結果になっても受け入れられる気がする
そうだ…誰も悪くない…
全部仕方がなかった
だって世界は
こんなにも――
残酷じゃないか

ベルトルトが背中を押された地獄とは普通の人間が戦場に連れ出されて見ることになった地獄だった。進撃の巨人において人間を超越し蹂躙する存在の象徴だった超大型巨人、その力を宿したベルトルトの正体は普通の人間に過ぎなかった。