メモ帳用ブログ

色々な雑記。

『戦争における「人殺し」の心理学』の基準を生真面目に当てはめると、上官を半殺しにして軍を追い出された杉元はソシオパスの狼ということになってしまうんだけど、『ゴールデンカムイ』は根本的に反社会的でピカレスクなエンタメ漫画だし、そういう基準は『ゴールデンカムイ』の方で臨機応変に変えちゃうべきだと思う。牧羊犬傾向の高い鯉登も登場時から鶴見についていくという間違いを犯しているし、月島を自分の隣で生かす決断をしたのもいい意味で義を裏切っている。第一『戦争における「人殺し」の心理学』はあくまで参考元のひとつで原作ってわけでもない。
ただ杉元が、攻撃性はありつつも、本来的には同胞を愛する犬の素質があるということは意識されていると思う。ノラ坊というあだ名もノラ犬に擬えられたものだ。杉元は結核で差別され、家族を失い、自分も故郷を離れざるを得なくなった。陸軍に入隊したが日露戦争で心に傷を負い、和人の社会での居場所を完全に失ってしまう。そして漂泊と苦難の旅の末、最後まで心にわだかまっていた幼なじみ2人との義理も果たし、アシㇼパの故郷が自分にとっても故郷となった。これから杉元はあの村で立派な牧羊犬として生きていくのだろう。