メモ帳用ブログ

色々な雑記。

函館で鶴見のやりたかったことについて考えてみる。
鶴見は中央のスパイだった菊田を殺害し、さらに金塊が土地の権利書に変わっていると知った後も、部下たちの前では北海道の開発を行うためには土地権利書が必要だと演説した。だがそれは本心ではないだろう。
まず菊田が中央のスパイである時点で金塊や権利書の入手後に北海道を開発している時間の余裕はない。北海道でケシ栽培を行うという演説の際も菊田がスパイだったことには触れていない。もし菊田がスパイでなければ、金塊の入手後も中央に報告せず、催促をはぐらかし続けて裏で開発を進めることは不可能ではなかった。部下たちにクーデターを持ちかけた時点の鶴見は本気でそれを行うつもりだったはずだ。月島も大泊の時点ではそのつもりだった。
しかし鶴見は菊田がスパイだと勘付き、内偵を頼んだのだろう宇佐美から証拠を受け取った。札幌で宇佐美を菊田と組ませたのは裏で内偵させるためだろうし、それ以前から疑いは持っていたことになる。中央が金塊発見後に自分を消すつもりであることも察していたはずだ。そうすると、鶴見はその時点ですでに満州に高飛びする計画を秘めていたのかもしれない。もし一足先に金塊を見つけるか、先に敵対勢力が見つけていても即座に排除できていたら、金塊を運び出して隠し直したり、換金したりすることだってできた。後は満州で関東総督府とともに金塊を元手に開発を行ったり、金をちらつかせて中央を操ったりすればいい。ほとんどの部下たちは切り捨てることになるが、鶴見は日本繁栄のためならそれができる男だ。
あるいは鶴見は五稜郭のあの建物で鯉登の愛を試し、他の何を捨てようとも自分とともに高飛びできるかを確かめようと考えていたのかもしれない。鶴見は鯉登が月島から何か聞かされたことを察しており、それでも父親に告げ口したりせずに自分について来ていることで見どころを感じていた可能性がある。だが盲信から覚めた鯉登がそれでも鶴見について来ていたのは、部下たちを救ってくれる指揮官だと信じていたからだと、鶴見は知らなかった。この試しによりむしろ鯉登のほうから敗北した場合の離別を切り出す事態を招いてしまった。