メモ帳用ブログ

色々な雑記。

個人的にはキャラがしっかりしていれば背景が多少雑でも気にしない。ただゴールデンカムイの終盤は、軍や政府などの背景の描写が雑+キャラクターの心情で難しいことをやっている+モノローグが控えめの作風、が合わさってキャラが何を考えているのかわかりにくくなっている。特に鶴見は嘘で他人を利用するキャラだけあってますますわかりにくい。
中央がどれだけ鶴見勢力に迫っているのかという点1つ取っても、
菊田を撃った直後の鶴見は近いうちに中央が自分たちを制圧しに来るようなことを月島、鯉登、二階堂の前で語った。菊田もその点は否定していない。
鶴見勢力の一般兵の前では、金塊は土地の権利書に変わってしまったがケシを栽培しアヘンを製造すれば北海道は発展するし我々の資金源になると語った。
五稜郭で鯉登は鶴見に、この戦いでもし何も得られなければ我々は賊軍として中央から裁かれる、そうなったら部下たちを守るために私はあなたを差し出す、と迫る。
列車で鶴見はアシㇼパと杉元に、日本繁栄のためには満州進出が必要だ、土地の権利書は満州から中央を黙らせるために必要だ、中央に追われる私には金塊を運び出す時間はないからくれてやる、列車から飛び降りろ、と語った。
こうして並べると、鶴見が部下たちの前で語ったアヘン製造計画は一般兵を騙して戦わせるための言葉と考えたほうが妥当に思える。もし鶴見勢力100人で第七師団本隊1万人に勝てると考えたとしても大量の武器は必要で、そのための元手が必要だ。ゴールドやマネーならともかく、怪しげな土地の権利書を担保にしても武器商人は武器を売ってくれないだろう。権利書で指定されている土地を無断で占拠してケシの栽培を始めたところで最初の収穫を得るためには何ヶ月もかかる。
気になるのは菊田の射殺現場を見ていた鯉登が鶴見のアヘン製造演説を聞きながら何を考えていたのかという点だ。当然鯉登や月島もこの演説を聞いていたはずだが、表情が描写されたのはすでに中央が動いていることを知らない一般兵ばかりだ。月島は演説が嘘だと気付こうが気付くまいが鶴見に従うだけだろう。だが鶴見がついて行く部下たちを救ってくれると信じていた鯉登はどうか。鯉登は深く考えずにまだ鶴見の言葉を信じていたのかもしれないし、不自然さに気付いたものの、最悪の場合中央に投降するにしろ土地の権利書は必要になるから鶴見は部下たちを鼓舞しようとしているのだと好意的に解釈しようとしたのかもしれないし、鶴見には奥の手があると考えようとしたのかもしれない。この場面の鯉登の心情は隠されている。いずれにせよ、函館の戦いの中で父親の船は沈み、部下たちは多数が死傷し、土地の権利書や金塊を得た場合さえもはやクーデターは不可能な事態となった。その上何も得られなけばどうなるか。鯉登は鶴見に詰め寄ったが、鶴見は何ら誠意ある対応をしなかった。