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選択バイアスについての有名な例である航空機の被弾箇所の逸話について語ろうと思って確認のために検索してみたら、その逸話が完全な創作ではないにしろかなりの部分が創作であることを知ってしまった。逸話ではよくあることだ。本当によくあることだ。以下に紹介されているのがその逸話の典型的な形式。


生還を目指せ、爆撃機の装甲を厚くすべき場所はどこか? (½):組み込みエンジニアの現場力養成ドリル(11) - TechFactory

第二次世界大戦で、最も危険な任務といわれたのが航空機による爆撃です。戦略上、相手の戦力を削ぐ空爆は必須ですが、爆撃機の被害は最小限に抑えたい……。爆撃機の生還率を上げるにはどの部分の装甲を厚くすればよいでしょうか? 無事に生還した爆撃機の被弾痕のパターンを参考に解決案を導き出してください。 (½)

この逸話のうち、帰還した航空機の被弾箇所のデータを装甲の強化のために利用するならば、被弾の多い部分を強化するのでなく、被弾が少ない箇所こそ被弾すると帰還できない部分と解釈して強化するべき、という要旨の部分は正しいらしい。ただし有名な被弾箇所の図は逸話から遡って作られたもので、この絵を載せた本かその参考元の完全な捏造。航空機も爆撃機や戦闘機や機種などが名指しされたものでなく、たとえば「当時の爆撃機パイロットは過酷な任務であり〜」のようにしているものは話を盛ってる。結論も「コックピットとエンジンの装甲を厚くする」という一言で済む単純なものでなく、そういう傾向はあるものの、もっと複雑なデータや装甲の脆弱性について論じているという。

一応要旨は正しいらしいので最初に言いたかったことに話を戻すと、帰還できた飛行機の被弾箇所は見ることができるからわかりやすく注目されるけど、帰還できなかった飛行機にある直接見ることのできない被弾箇所こそが致命的な打撃であり、本当に注目するべきは見えない傷のほうだということは色々な事柄に当てはめられると思う。たとえばヒット作にもアラがあるものだし、誰でも知ってることだけにあげつらわれて過剰にネタにされることも多いけど、少なくともそれは致命傷にはならなかったアラだと判断できる。また、最初からこぢんまりした出来の良さを狙っていたならともかく、大ヒットを狙った作品が全く話題にならなかったとしたら、悪評が少なかったとしても商売面では根本的に欠陥があったと言えるのかもしれない。本当につまらない作品は誰も見ていないので根本的な欠陥さえ話題になりにくい。ただ有名作家の作品や大規模なプロモーションが行われた作品の場合、評判が悪くて商業的に散々な結果に終わった挙げ句、悪評だけが広まり続けることも時々ある。