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色々な雑記。

第294話で鯉登の心が16歳の頃に戻り恐怖ですくんだのは、単に誘拐された時の恐怖が蘇ったからではないのかもしれない。
ここからしばらく前書いた分と重複。
月島は鶴見から嘘という愛を注がれた後、その嘘を嘘だと暴露しても自分を愛したままか試されたことがあると鯉登に告白していた。また鶴見が長年妻に身元を偽り続け、本当の身元を明かせたのは死の間際で、返答を聞くこともできなかったという話を盗み聞きしていた。こうした情報から、鯉登は五稜郭のあの建物へ月島とともに鶴見から招き入れられた時、自分も嘘を暴露されても愛が残るか試されようとしていると気付いたはずだ。
重複終わり。
あの時の鯉登はまだ鶴見に対する愛を持っていた。誘拐犯から颯爽と救出してくれた鶴見に対する愛を、それが自作自演だったと知ってもまだ持っていた。もし鶴見がここで自分を嘘で試そうとせず、上官としてまっすぐに助力を求めてくれてさえいれば、こんな状況でも部下としてついて行けたと思うくらいには。14歳の自分を叱ってくれた言葉は、演技だったとしても本当に心に響いたというのもあるだろう。
だが鶴見はこの期に及んでもというか、この期に及んだからこそ、信じられるものを確保するために部下を試さざるを得ないような男だった。そんな上官についていけば、自分は自分について来る部下まで不幸にしてしまう。だから鯉登はここで自分の鶴見に対する愛を切り捨てざるを得なくなった。16歳の自分を切り捨てざるを得なくなった。あの場で鯉登の中の16歳の鯉登が怯えていたのは、自分が現在の自分から息の根を止められざるを得なくなったことに対する恐怖だったのかもしれない。