メモ帳用ブログ

色々な雑記。

三眼は自分のことを天経地義を重んじる素晴らしい存在だと考えていたようだけど、実際黒山村でどう思われていたかは三眼に対してひたすら卑屈になる村人の態度や、村人が子どもたちには三眼の存在を気取られないようにしていた点から推して知るべし。
村長は三眼のことを過剰に持ち上げていたけど、それは支配者である三眼は素晴らしい存在ということにしないと村の秩序が保てないからだ。村が混乱すれば村長が真っ先に吊るし上げられかねない。三眼が自害した途端に村長はあっさり態度を変えた。自分が不利益を被らないために従っていただけで、尊敬していたわけでは全くない。
近隣のいくつかの村(黒山村の村長によれば3つの村)の年寄りが屍者が殺人をしているのに気が付き、自分の家族の安全と引き換えに生贄を差し出すことを持ちかけてきたと三眼は言った。その時の回想では3人の人影が跪いている。三眼は生贄がみんな取るに足らない理由で連れてこれたと把握しつつも食っていた。
だが黒山村から差し出されたのが白大の子孫だとは気付いていなかった。去年三眼が現れて自分の家が生贄の役割を引き受けたと白小小は高皓光たちに言った。白家は千年ほど黒山村に住み続けていて、村で生まれ育った白小小やその父親もそれまでは村人とずっと仲が良かった。三眼も1、2年前にようやく傷が癒えたばかりだと言っているので、洞窟から本格的に出て活動を始めた(数百年ごとに一度目覚めては苗木を見つめたりはしていたそうだ「每几百年醒来一次对着你发呆」)のはそのタイミングだ。
傷が癒えた三眼は近隣の村人や馬賊満州馬賊でなく騎馬盗賊団一般を指す馬賊)を食い始めた。三眼が現われるまで近隣の村人は特段の罪は犯していなかった。馬賊だって貧しい村の自警団との境は曖昧だ。三眼の言う屍者が人間を食うのは天経地義というのはそのまんまの意味で、別に悪人を食べることで天誅を下すみたいなニュアンスはない。三眼はごく普通の人間を当たり前のように食べていたので、三眼に捧げられる生贄が悪人である必要はないし、生贄を捧げた側だって悪人を要求されているなんて思っていなかった。むしろ村によっては善人の処女とかを汚れのない最上級の生贄として捧げて忠誠を示していてもおかしくない。黒山村で白家は罪人だから生贄になるべきと繰り返されていたのはあくまで村内の秩序を保ちつつ円滑に生贄を差し出すためだ。三眼が白小小に白家は罪人などでないと教えたのは恩人である白大の名誉を回復するためで、生贄が理不尽に選ばれたことに怒ったのではない。
黒山村の年寄り(おそらく村長)は突然現れた法屍者に誤った対応をしてしまった。だが1、2年前までは村が生贄を捧げたことなどなかった。白家も特段の迫害は受けていなかった。三眼の話をすべて聞いた高皓光も、村長は白小小に差し出す一方で、それ以外の村人に対しては「只是现在… 以人的立场,你们当中的大多数人… 还不该死。」(ただ今は… 人としての立場から言えば、お前らの大多数は… それでも死ぬべきじゃない。)と言った。ただし頭で考えただけの人としての立場を貫くことは難しかった。